365日をH棟で

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大学院生。のんびり。

ジャズ⇔ヒップホップの再翻訳について。

 大晦日→Oh, is it miso?→おお、味噌か

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先日、知人男性がリコメンドしていたAshley Henry(アシュリー・ヘンリー) & The RE: Ensembleの最新作、Easter

 

6曲収録のEPですが、アルバム一周で40分を切るという親切設計。

昨年ヘビロテしたものんくるの「世界はここにしかないって上手に言って」もプロデューサー・菊地成孔氏の意向で1曲1曲の長さが極限まで抑えられており、11曲で41分というポップス的な短さのアルバムでした。
初期の「飛ぶものたち、這うものたち、歌うものたち」では10曲で1時間6分だったので、 このダイエットはかなりのものです。

Easterも「うーん、今のこの時間はなんなんだろう」という部分が曲中にないぐらい徹底的に無駄が省かれていますが、各曲にはインプロビゼーションのパートもしっかり用意されているので、集中力を切らすことなく一気に聴き通せました。

どの曲もキャラが立っていて飽きないですし、捨て曲無しで楽しめるオススメの1枚です。

 

収録曲の中では、Nas(ナズ)The World Is Yoursのカバーが個人的にお気に入り。

 

曲の終盤(上の動画では4:10~)から始まるオリジナルのリフを拡張・再構築し、まるっきり新しい曲に仕上げています。まさにRE: Ensemble

このリフがもう、最高なんですよね。かなり今っぽい雰囲気ですが、今から約50年前にリリースされたジャズピアニストAhmad Jamal(アーマッド・ジャマル)I Love Musicが元ネタです。

(The World Is Yoursのリフは5:00~)
Ahmad Jamal - I Love Music - YouTube

 この数小節が四半世紀後に地上最強プロデューサーことPete Rock(ピート・ロック)によってサンプリングされ、ナズのThe World Is Yoursになりました。

 

 

最強。ナズのIllmaticが生まれた背景と合わせて聴くと、ピート・ロックの力の入り方がビンビンに伝わってきます。

 そしてIllmaticのリリースから更に四半世紀が経ち、弱冠26歳のアシュリー・ヘンリーによってこのリフは再びジャズの世界に戻され、ジャズ→ヒップホップ→ジャズの再翻訳がなされました。

この再翻訳が結構面白くて、どんどん流行ってほしいと僕は密かに思っているのですが、オリジナルに勝るとも劣らない名翻訳がなかなか見当たらないんですよね。

以下の2曲は、個人的に好きな再翻訳(カバー)です。

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Stakes Is High / De La Soul(デ・ラ・ソウル)

 

イカした和音のピアノと一定の音程でブーブー鳴るトランペットが印象的な、一度聴いたら耳を離れなくなるリフ。

宇宙最強のビートメイカーこと故J Dilla(J・ディラ)の中でも特に好きなトラックの一つです。

これの元ネタは、先ほども登場したアーマッド・ジャマルSwahililand。そもそもの曲自体が相当ヤバいので、ぜひ一度フルでも聴いてみてください。

(Stakes Is Highのリフは7:33~)
Ahmad Jamal - Swahililand - YouTube

 ジャマルとディラ、双方のセンスが冴えに冴えてます。

で、この曲の再翻訳はRobert Glasper Experiment(ロバート・グラスパー・エクスペリメント、RGE)によるものです。

 

 

オリジナルでもラップしているMos Def a.k.a. Yasiin Bey(ヤシーン・ベイ)を客演に迎えた…正確には再翻訳ではなく、ただのカバーなのかもしれませんが。

縦揺れでグルーヴしまくるRGEと咆哮するヤシーン・ベイ、みんなバイブス上がってます。

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I Used To Love H.E.R. / Common(コモン)

 

まず、この曲が好きすぎる。

俺には10歳の頃に出会った最高にソウルフルな女がいてな、いつも俺のそばにいてくれたんだ。
彼女は徐々に人気が出てきて、夢を叶えるために西海岸へ行った。
俺は良いことだと応援してたんだけど、そのうち西海岸のつまんねぇ奴らとつるみだして、今じゃもうボロボロだ。
だから俺が元の彼女を取り戻すために救ってやるんだ。

と、1人の女性についてラップしているように見せかけて、

あ、俺が言ってる「彼女」ってのは、ヒップホップのことな。

と最後の一行で締め、当時大流行していた西海岸のギャングスタラップを痛烈に非難。

ここから西海岸を代表するヒップホップグループであるN.W.A.Ice Cube(アイスキューブ)との激烈ビーフ(現在は和解済)が始まるわけですが、ここでのコモンは知的さと攻撃力がカンストしていて最高です。ドラクエ魔法戦士みたいな。今と違って、ちょっと鼻づまり声だけど。

 

元ネタはクロスオーバーの黎明期を支えたギタリスト・ボーカリストGeorge Benson(ジョージ・ベンソン)The Changing World

(I Used To Love H.E.R.のリフは0:00~、4:25~)
George Benson The Changing World - YouTube

(それにしてもジョージ・ベンソンってホント上手いな…)

 

この曲の再翻訳は、ヒップホップ好きとして知られるオバマ元大統領の政権時に、ホワイトハウスの図書室内で行われたNPR Tiny Desk Concertでの演奏をご紹介。

コモンがロバート・グラスパーらとコラボ&セルフカバーしています。

 


これも再翻訳ではなくただのカバーですが、上述した過激な歌詞とはミスマッチなほどスウィートな雰囲気です。ホワイトハウスでの演奏なんて、トランプ政権下の今じゃ絶対に無理でしょうね。

観客に語りかけるようなコモンのラップも良いですし、黒のタートルネック+バーガンディー色のブルゾンが最高に似合ってます。

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書き終えてから、後半で取り上げた2曲はアシュリー・ヘンリーのソレとは少しテイストが違うことに気付いてしまいましたが、まぁ、その、良い音楽は常に良いので(?)、許してください。(???)

こういう再翻訳モノの曲・アルバムがあれば、是非とも教えてください。