365日をJ棟で

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今年の愛聴盤③ The Village / Yotam Silberstein

8月末、大学院入試に合格した翌日。ヨタム・シルバースタインというイスラエル人ギタリストが、自身のカルテットを引き連れて来日しました。イスラエル発のジャズは好きですし、昨年はシャイ・マエストロのソロピアノ公演も観に行っています。

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15/9/7 京都le club jazzにて、シャイ・マエストロ氏と。トリオ作であるThe Road To Ithacaにサインを頂きました。

ヨタム・シルバースタインカルテットの来日公演、メンバーは以下の通り。

Yotam Silberstein (Gt)

Aaron Goldberg (Pf)

Or Bareket (B)

Daniel Dor (Dr)

なななんと、ピアノはあのアーロン・ゴールドバーグ。Beyond / Joshua Redman, Can't Wait For Perfect / Bob Reynolds, The Remedy / Kurt Rosenwinkel...好きなアルバムにはいつもアーロンがいます。コットンクラブで自身のトリオを演るようなピアニストが京都のジャズクラブで観れる、こんな千載一遇の好機を逃す訳にはいきません。ベースのオル・バレケットはアリ・ホーニグのトリオ、ドラムのダニエル・ドールはアヴィシャイ・コーエンのFrom Darknessにも参加している、現在ジャズを支える重要人物たち。期待値が自然と上がった状態で観に行ったライブですが、温かくもスリリングな演奏に心を打たれ、大満足で帰ってきました。

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16/8/29 京都le club jazzにて、アーロン・ゴールドバーグ氏と。カート・ローゼンウィンケルのサインが入ったThe Remedyにもサインを頂きました(残るはマーク・ターナー、ジョー・マーティン、エリック・ハーランド…道は長い)

 

The Village / Yotam Silberstein

 

Yotam Silberstein (Gt)

Aaron Goldberg (Pf)

Reuben Rodgers (B)

Gregory Hutchinson (Dr)

そんなヨタムの新盤は、今のジャズシーンを引っ張りに引っ張っている、最強のリズムセクションを従えて登場。サイドメンバーはジョシュア・レッドマンの黄金カルテット作のPassage Of TimeBeyondと全く同じ。


Joshua Redman Quartet @ Visioninmusica 2014

まだどこにも出回ってない、ツアー先行販売ということで、新しいモノ好きの自分は躊躇うことなく購入(笑) (2016年12月、晴れてヨーロッパ&日本でリリースされたそうです。おめでとうございます!)

1曲目のParabensはシンプルなリフが繰り返される、ミディアムテンポのブルース。吸引力の強いルーベンとハッチェンソンのタイトなビートに、出だしから惹きつけられます。16分音符が敷き詰められたテーマは、ヨタムとアーロンの息もピッタリ。

2曲目のMilonga Grisはヨタムが敬愛するアルゼンチン人ピアニスト、カルロス・アギーレの曲。流麗でエキゾチックなメロディーにジャズのフレーバーが違和感なく混ざっており、聴きやすい1曲。こういった他ジャンルの音楽も難なくこなす、サイドメン達の適応力も凄い。そういえば、ブラジル音楽を全然聴いたことがなかったなァ。カルロス・アギーレを中心に、色々回ってみようかと思います。

アルバムタイトルにもなっている4曲目のThe Villageは、テーマの譜割りが特異的な高速ナンバー。音数は非常に少ないのですが、油断していると拍を見失ってしまうスリルにドキドキ。ライブでも演奏しているメンバーの緊張感がこちらに伝わってきました。ソロでは軽快な4ビートにチェンジし、推進力全開のリズム隊に煽られながら、ヨタムとアーロンが軽快に歌います。バックテーマでハッチェンソンが叩くパワー全開のソロも◎。本作イチオシの1曲。

続くStavは、哀愁漂うピアノの上でルーベンが弓弾きによる美しいメロディーを奏でます。ナウい言葉で例えるなら、エモい。ヨタムはジャズだけではなく、多種多様な音楽を積極的に吸収し、自分のサウンドに取り込んでいます。本曲では特にそれが感じられました。

ブルージーで物悲しい雰囲気のFuzzでしんみりしつつ、迎えたAlbayzinは中東の香りがする高速3拍子ナンバー。ここではカート・ローゼンウィンケルばりにギターを弾き倒すヨタムがカッコいい!

アルバムの最後は、レニー・トリスターノ作のLennie BirdOrnithology, How High The Moon等と同じコード進行を持つ本曲は、かつて師弟関係を結んでいたヨタムとアーロンによる、会話のようなイントロで始まります。ここでは師匠と弟子ではなく、いちミュージシャンとして対等に向かい合う2人の姿に、微笑みが止まりません。僅か3分40秒の演奏ですが、内容はギッシリ詰まっており、ただのスタンダードのカバーには終わっていません。飛ぶ''鳥''跡を濁さず、スッキリとアルバムを締め括ります。

本作はヨタムの優しい人柄が溢れ出た、非常に心地よいアルバムです。各メンバーのインプロも非常にハイレベルで楽しいのですが、とにかく曲・アレンジが良い!コンテンポラリーなジャズギタリスト(カート・ローゼンウィンケル、ジュリアン・レイジ、ギラッド・ヘクセルマン、ニア・フェルダーetc...)の書く曲はどれも良いモノが多いですよね。ヨタムもそんな名コンポーザー・アレンジャーの1人です。やっぱりジャズは曲ありきだな、と改めて思わせてくれました。

本作には収録されていませんが、ライブでも演奏されていたMatchaという曲もオススメです。MCでは「次にやる曲は、日本語ではお茶の意味があるらしいんだ」と面白おかしく紹介されていましたが、抹茶感は一切ありません(笑)

Yotam Silberstein Group - Matcha