squaredjacketsのブログ

365日をH棟で

音楽が好きな大学院生。ジャズをメインに色々…

リズム・チェンジ殺人事件

Chris Potter MURDERING "Lester Leaps In" (RIP to Rhythm Changes)

と題された動画が先月投稿されていました。クリス・ポッターがリズム・チェンジの上を縦横無尽に駆け巡り、蹂躙(?)している様子から名付けられたようです。この投稿者はYouTube上にアップされているジャズの動画をかき集め、ユニークな題名で再投稿している方で、他にもキャッチーな動画を多く投稿しています。

そもそもリズム・チェンジって何?というところから始めますと。
名前の由来は、ジョージ・ガーシュウィンの代表曲の1つである、I Got Rhythmのコード進行から。アイ・ガット・リズムのチェンジ(進行)=リズム・チェンジということですね。
その後もLester Leaps In、Anthropology、Oleo、Rhythm-A-Ning、Weeなど、進行はそのままにメロディーを変えた様々なリズム・チェンジの曲が生まれ、セッションにおける定番曲となっています。トランペットやテナーサックスのようなin B♭の楽器にとってはCmaj、つまりシャープもフラットもないドレミで演奏できる曲でもあるのです。また、そのシンプルさ故にBPM300以上で演奏されることも珍しくありません。

そこで今回は、様々なジャズメンたちによって殺害されてきたリズム・チェンジの供養…じゃなくて、名演を集めてみました。

Art Tatum plays I Got Rhythm (solo,1940)
盲目の天才ピアニスト、アート・テイタムが独奏でお送りするアイ・ガット・リズム。理解が全く追いつかない2分間。指10本じゃないでしょ、どう考えても。自在に転調を繰り返し、淀みなく弾きまくるテイタムの目まぐるしさに巻き込まれたリズム・チェンジさんおよび全てのピアニストが昇天。

Sonny Rollins / Oleo
オレオといえばソニー・ロリンズソニー・ロリンズといえばオレオ。このテイクをコピーしようとしたら、録音のせいか微妙に音程が合っていなくて、何の音か聴き取れなかった僕が亡くなりました。リズム・チェンジさん、一命を取り留める。

Aaron Parks Oleo
現代ジャズにおける重要なポジションに位置するピアニスト、アーロン・パークスが活動の初期に残した録音より。なんと、アーロンは当時16歳。既にビバップ+コンテンポラリージャズの語法を完全にマスターしてしまった若き高校生のパワーに、自信を喪失したピアニストも多いことでしょう。こんな若造に完膚なきまでに殺られてしまったリズム・チェンジさんに、少し同情してしまう。

Pat Martino Trio Live at Yoshi's – Oleo
パット・マルティーノのオルガン・トリオ作品。マルティーノのダンディーなソロ&コードワークとオルガンのオシャレさが良い。結局、オシャレが一番なんですよね。それでいてカッコよさも同居。テクニックだけが全てじゃねぇから!と若き日のアーロン・パークスに説教するリズム・チェンジさん、マルティーノが醸し出す大人の余裕にオシャレ死。

Michael Brecker - Oleo - 1983
サックス界に多大なる影響を与え続けた、というか今生きているテナー奏者の10割は何かしらの影響を受けているであろうマイケル・ブレッカー。ソロの1コーラス目の最初の音がコード(B♭)に対する半音上の♭9th(B)という、あまりにも大胆すぎる出だし。やだ、マイケルさんったら、そんなアウトした音出さないで…リズム・チェンジさん、恥ずか死。

Joe Pass and NHOP - Oleo
説明不要のレジェンドギタリストであるジョー・パスと、先程のマイケル・ブレッカーのテイクでもベースを弾いている、ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン、通称NHØP。ベーシストらしからぬ爆速弾きで聴き手を翻弄。ペデルセンの指さばきにリズム・チェンジさん、全身むち打ち。

The JazzTimes Superband - Oleo
速さを求めるアナタに。スティックを持ったゴリラであるデニス・チェンバースに撲殺されてしまったリズム・チェンジさん。ボブ・バーグのソロは、明治大学Big Sounds Society Orchestraの島田啓助さんがコピーされています。何度観ても熱量と完成度がスゴいです。金髪のトランペットの方は通常音域がほとんど出せず超高音域しか鳴らせなかった、という噂を聞いたことがありますが、よく見ると途中のトランペットソリはラストを除いて全て吹き真似なんですよね。そんなのアリ!?(笑)

Oleo - Joel Frahm & Lage Lund 4tet
現代ジャズ界の先鋭隊、ジョエル・フラームとラーゲ・ルンドによる演奏。仁王立ちで力強く攻めるフラームと、謎めいたコードワークでオレオ感を完全に打ち消すルンドの組み合わせ。メダパニを受けた後に素早さ255の武闘家で殴られたリズム・チェンジさん、つうこんのいちげき。本演奏の一部は明治大学BSSOの方によってコピーされています。コチラも素晴らしいです。

James Carter Oleo
ほぼネタ枠ですが、一応ご紹介。ジェームズ・カーターがクレイグ・テイボーンらとジャズ・スタンダードを再解釈し、イジり倒したアルバムより。空中分解しかけているのに、なんとなく纏まって聴こえる不思議なテイク。俺をこんな適当に扱わないでくれ!と訴えるリズム・チェンジさんの願いも虚しく、曲の最後の不穏すぎるファズトーンで爆死。

 

いやー、いいですね、リズム・チェンジって。ここに挙げたのはお気に入りテイクの一部ですが、漁れば漁るほど良いものが出てきますね。
皆さんのオススメテイクも是非コメント欄で教えてくださいね!

 

…ッパン!

そーいえば、さっきからオレオしか紹介してねーな!!!

カミナリ、面白いですよね。最近気になる芸人さんです。

A Night In Tunisia / Joshua Redman (1986)

押しも押されもせぬ大人気サックス奏者、ジョシュア・レッドマンが高校生だった頃の演奏を見つけました。

Jazz Educational Programs | The Monterey Jazz Festival Collection - Online Exhibits

スタンフォード大学の図書館が有している、世界最大規模のジャズフェスであるモントレー・ジャズ・フェスティバルに関する記録。そこに、1986年に17歳のジョシュア(当時は母親の姓であるJosh Shedroffを名乗っていました)が出演した際の録音があります。1分ほどの短い音声ですが、A Night In Tunisiaのテーマ部を演奏しています。何やら不思議なアレンジが施されていますが、ジョシュアは当時からジョシュアであることが分かりますね。ちなみに、この年にジョシュアはモントレー・ジャズ・フェスティバル・ハイスクール・ビッグバンドの一員として来日しており、山野ビッグバンド・ジャズ・コンテストにゲストバンドとして出演しています。当時会場に居た人たちも、まさかここでテナーを吹いている水原希子似の高校生が数年後にはハーバード大学を首席で卒業し、セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティションで優勝するとは思わなかったでしょうね。

ここから7年後、ジョシュアは自身のカルテットで再びこの曲を演奏しています。おそらくYouTubeで観れるジョシュア関連の動画だと、一番有名なモノなのではないでしょうか。


現代ジャズというジャンルは、この4人によってどれだけ発展したことか…

このカルテットのメンバーの当時の年齢は以下の通り。

ジョシュア・レッドマン→24歳
ブラッド・メルドー→22歳
クリスチャン・マクブライド→21歳
ブライアン・ブレイド→23歳

まだ大学を卒業したばかり、あるいは在学中という若者で構成されたカルテットが、パット・メセニージョン・スコフィールドはまだかと待ちわびる数千人の観衆の前で、臆すことなく堂々と素晴らしい熱演を繰り広げて、惜しみない拍手と喝采を浴びている。今年で24歳になる僕にとって、全員が同い年 or 年下なわけです。なんだか虚しくなってきました。今日も研究、頑張ります…

 

Nearness

Nearness

 
Moodswing

Moodswing

 

 

The Turn / Jerome Sabbagh (2014)

僕は大学ではジャズ研に所属していました。そこで4年間、サックスをピーヒャラピーヒャラ吹いていました。

毎年、12月にはジャズ研の定期演奏会なるものが開催されます。2年生はここで現役引退となります。かなり早い幕引きですが、部員数が非常に多いウチでは、貸出用の楽器や部室のスペース等の制限も多いため、老いぼれにはサッサと引退してもらわないと困るのです。あっ、部活の話はすればするほど長くなるので、今日はやめておきます。

で、3年生(既にOB)のときに大学の同期で、現在はジャズギタリストとして活動中の酒井柊人くんがアレンジしたスタンダード曲、It Could Happen To You定期演奏会で演奏することになりまして。僕は曲を演奏する際、参考にするテイクを探す→繰り返し聴く→結局ほとんど参考に出来ず本番で訳の分からん演奏をする、というサイクルを繰り返すのですが、この曲もいつもの様に検索すると…

ジェローム・サバーというテナーサックス奏者が、ピアニストのダニー・グリセットとデュオで演奏している動画を見つけました。CONNのビンテージサックスにセルマーのソロイストという、アコースティックな環境が最高に似合うセッティング。往時のスタン・ゲッツを彷彿とさせる、ちょっと掠れた、倍音が豊かで、よく響く音色。あっという間に虜になってしまいました。

ちなみに、同曲をダニー・グリセットがトリオ(ヴィンセンテ・アーチャー、ケンドリック・スコットと一緒)で演っている音源も、非常にオススメです。
Danny Grissett Trio - It Could Happen to You (2008 Criss Cross) - YouTube

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The Turn / Jerome Sabbagh

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1. The Turn
2. Long Gone
3. Banshee
4. Ascernt
5. The Rodeo
6. Cult
7. Once Around The Park
8. Electric Sun

Jerome Sabbagh (Ts)
Ben Monder (Gt)
Joe Martin (B)
Ted Poor (Dr)
Sunnyside Record (2014)

というわけで、今回は気になるサックス奏者、ジェローム・サバーのアルバムに手を出してみました。ホームページとフランス語のwikiから経歴を拾ってきましたので、まずは簡単にジェロームの紹介を。

1973年にパリで生まれ、1995年よりNYに拠点を移す。バークリー音楽大学ではジョージ・ガゾーン、デイヴ・リーブマン等に師事。最晩年のポール・モチアン(前回紹介しました!)のグループで活動。モチアンの亡くなる2ヶ月前には、ヴィレッジ・ヴァンガードでベン・モンダーとのトリオで公演を行っている。2004年より活動しているベン・モンダー、ジョー・マーティン、テッド・プアーとのレギュラーカルテットで3枚のアルバムを発表している他、ベン・ストリート、ロドニー・グリーンとのトリオでも活動中。

なるほど。年齢的にはジョシュア・レッドマン、クリス・ポッター、エリック・アレキサンダー、シェーマス・ブレイクあたりと近いんですね。アメリカのテナーサックス奏者というのは本当に達人たちの密集地帯で、プロアマ問わず、日本では無名の凄腕プレイヤーがゴマンといます。ジェロームも経歴や作品的には立派なジャズ・エリートですが、その知名度はかなり低いように思います。

ポール・モチアン作曲のOnce Around The Parkを除き、全曲がジェロームのオリジナル。1曲目の冒頭からいきなり、おどろおどろしい雰囲気が漂う。夜な夜な行われている、怪しげな儀式を覗き見している気分に。5曲目のThe Rodeoのようにズンズン進む軽快な曲も用意されてはいますが、全編を通して「ポップさ」といったものは微塵も感じられません。どう考えても売れ線狙いじゃない。
ただ、ピアノがいないことと、浮遊感のあるギターがコードワークを支えていることから、曲の重さとは裏腹にサウンドは軽め。現代ジャズがビバップハードバップと比べて小難しいと思われがちな理由の一つに、サウンドが意味不明すぎてシンドい!というのが挙げられますが、そういった苦労は本作では少ない。同じ編成でもヨッケン・リュッカートのアルバムとか、結構スゴいよねェ…

ジェロームのサックスは柔らかさがあり、テーマはp~mfの強さで、楽器を鳴らしきることなく、テナーサックスにとって美味しい音域、美味しい音量を忠実に守っています。技術的にかなり難しいんです、こういうのは。打って変わって、ソロ中は上から下まで音域をフルで駆使しブリブリと攻めまくる部分も。Bansheeでの吹きっぷりがGOOD。マーク・ターナーやウォルター・スミス3世が好きなら、スッと受け入れられるスタイルだと思います。

マリア・シュナイダー・オーケストラの他、デヴィッド・ボウイの遺作であるにも参加しているベン・モンダーですが、コード楽器が1人なこともあり、本作を深遠なムードに導くための重要な役回りを演じています。テンションの高低差は無く、メロディーを演奏するとき以外は、黙々とコードワークに終始。聴いていると耳が吸い込まれそう。ああ、僕も謎の儀式へ誘われてしまうのか…
しかしジェローム同様、ソロパートでは弾きまくり。The TurnBansheeCultでは音を強く歪ませ、マシンガンのような高速フレーズを遠慮なく打ち込んできます。周りの3人がアコースティック的で落ち着いたサウンドであるが故に、ベンの厳つさが浮きまくっていますが、どういうわけか不自然さがない。

ベースとドラムは難しいことは一切やっておらず、拍子が迷子になったり、テンポが掴めないということも無い。この謎めいた浮遊感の中で下手な動きを加えてしまうと、世界観が崩壊してしまう恐れがありますからね。儀式中はお静かに。10年間も続いているカルテットですから、メンバーもジェロームの意図というのをしっかり理解しているのでしょう。背後から忍び寄るような不気味さを保っている2人ですが、盛り上がるシーンでは強めに演奏したり、バンド全体のダイナミクスを支配する役割を担っています。ジョー・マーティンといえばThe Remedy / Kurt Rosenwinkelにも参加しているベーシストですが、いつでも良い仕事をしてくれますね。好き。

気楽にジャズが聴きたいなぁ、というときに再生ボタンを押せるような代物ではありませんが、噛めば噛むほど味が出てくるスルメのようなアルバムです。もう既に3回通して聴いたので、ハマっちゃったのかもしれません。 ベン・モンダーのギュインギュワンなソロが聴けるという意味でも、価値のあるアルバムだと思います。

The Turn

The Turn

 
ENCOUNTERS

ENCOUNTERS

 

 

Flight Of The Blue Jay / Paul Motian and the Electric Bebop Band (1998)

先日の記事で紹介した、ボブ・レイノルズのVLOG内で述べられている1枚のアルバム。

 

それがReincarnation Of A Love Bird / Paul Motian and the Electric Bebop Bandです。90年代、若き日のクリス・チーク、クリス・ポッター、カート・ローゼンウィンケル、ウォルフガング・ムースピールが在籍した、ツインサックス、ツインギターのかなり変則的な編成。でも、やるのはビバップやそれに準ずる語法を取り入れた曲。なんてったってエレクトリック・ビバップ・バンドですから。どこぞのヘビー・メタル・ビバップ(大好き)とは違うんです。

しかし、このアルバムはとうの昔に廃盤。Amazonでは.jpや.com問わず1万円に近い値がついていることが多く、ヤフオクやフリマアプリに出ることもまず無い。しかもピンポイントでApple MusicやSpotifyにも無い。なんならYouTubeにも全曲は無い。以前オンラインの中古レコード屋で4000円ほどで売りに出されていましたが、すぐに買われていました。聴きたくても聴けない、そんなアルバムが2017年現在、存在しているんです。期待値だけが膨らむ。逆に、一生聴けない方が幸せなのかもしれない。

Flight Of The Blue Jay / Paul Motian and the Electric Bebop Band

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Paul Motian (Dr)
Chris Cheek (Ts)
Chris Potter (Ts)
Brad Schoeppach (Gt)
Kurt Rosenwinkel (Gt)
Steve Swallow (B)

だから、代わりにこのアルバムをSpotifyで見つけてきました。妥協じゃないです、方向転換です。ちなみに「こんなメンツを集めてくるリーダーのポール・モチアンって一体誰なんだ?」という疑問もあるかと思いますが、ジャズ史上最も有名なアルバムと言っても過言ではない、ビル・エヴァンスPortrait In JazzWaltz For Debbyでドラムを演奏しているレジェンド中のレジェンドです。とんでもなくスゴい人なんです。

メンバーはReincarnation(略)からギターのウォルフガング・ムースピールがブラッド・シューパッチ(読み方合ってる?)に変わっただけ。誰なんでしょう。現在はBrad Shepik(ブラッド・シェピク)という名前に改名しているようです。ジャズミュージシャンは改名が好き。どうやらヨッケン・リュッカートのカルテットなどでも活動していたようですが、YouTubeで名前を検索してみると…

ムムム!見覚えのある髭のおじさん!

なんと、サックスはデイヴ・ピエトロさん。穐吉敏子オーケストラ、現在来日中のマリア・シュナイダー・オーケストラ等、木管楽器奏者として活躍中の大ベテランです。あのダニー・マッキャスリンの同僚ですよ。

実はピエトロさん、New York Tokyo Connection(通称NYTC)の一員として、2013年と2014年にウチの大学のジャズ研にクリニックという形で訪れています。メンバーは、日本を中心に活動されているピアニストのジョナサン・カッツさん、日本ベース界の重鎮である安ヵ川大樹さん、大野雄二・ルパンティック・ファイブなどで活躍されていたドラマーの江藤良人さん。僕は直接的な指導を受ける立場ではなかったのですが、モデルバンドを本場の言葉・音で指導していく姿に、かなりの刺激を受けました。ピエトロさんはマイク無しでも音が非常に大きい(しかも全然うるさくない)ので、「どうやったらそんなに大きな音で吹けるんですか?」と質問したら「とにかくホーンにエアを沢山送ることだよ。昔、穐吉敏子に『もっとデカい音で吹け!』と怒られ続けたんだ(笑)」と教えてくれました。

そんなNYTCですが、実は来週から日本ツアーが始まります!みんな、観に行くべし!必ず!

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…完全に脱線している上、とんでもないステマみたいになってしまった。でも信じてください、これは偶然なんです。そのぐらい、ジャズの世界というのは横の繋がりが大きいということです。うーん。

で、肝心のアルバムはというと、編成ほど尖った印象を受けませんでした。寧ろ自然。2本のサックスとギターは左右に振り分けられていますので、テーマを完全にユニゾンしたり、ハモったり、掛け合いをやってもサウンドはスッキリ明快。全員が同じメロディーを演奏することもあるし、サックスとギターが1人ずつテーマを演奏し、残りの2人がオブリガートを演奏する等、パート分けも細かく決められています。こう見えて、意外と自由度の高い編成なのかもしれませんね。まだまだ開拓の余地がある、面白いジャンルなんじゃないかな。

チーク&ポッター、シューパッチ&ローゼンウィンケルはお互いに音色がそっくりなので、気を抜くとどれが誰なのか分からなくっちゃいます(笑) これは「わざと似たように演奏しろ」というポール・モチアンの指示があったのでしょうか。しかし、ジョシュア・レッドマンとマーク・ターナーの共演からも感じ取れるように、90'sのジャズメンは皆リアルタイムで切磋琢磨し、高みを目指し合ったライバル・仲間同士。互いに刺激を与え合っていたのですから、サウンドに共通点があるのは当然かもしれません。そういえば、ここに挙げた4人によるサックス四重奏、Axis Quartetなんてのがありましたね。

90年代~2000年代初頭では多く見られた彼らの共演も最近はほとんどないので、またどこかで機会があればやってほしいなぁ。

また脱線しちゃった。

アルバムの方ですが、1曲1曲が短いため、中だるみしないのも高ポイント。全11曲で49分、最も長い曲でも6分しかありません。ソリストたちもダラダラと演奏せず、キビっとした良いプレイをしてくれます。今どきのアルバムだと1曲で10分を超えることは珍しくないことですが、このぐらい引き締まった構成の方がリスナー的に取っつきやすいですね。(このブログも、もう少し短く分かりやすくならないものですかね…)

今でこそシーンの最前線でバリバリに活躍している個性豊かなジャズメン達ですが、ポール・モチアンという偉大なるメンターの前で修行している姿を知っておくのも良いのではないでしょうか。現代ジャズの夜明け前、若獅子たちが日夜行っていた膨大なセッションの、ほんの一部にですが触れることが出来る1枚でした。オススメです。

Flight of the Bluejay

Flight of the Bluejay

 

もしも、アイドルが自分の家に居たら…

どんな気分でしょうか。

チョットいかがわしいタイトルですが、今日話す「アイドル」というのは、欅坂46の小池美波ちゃんのことではありません。「あこがれの人物」としての「アイドル」です。

アイドルとは、「偶像」「崇拝される人や物」「あこがれの的」「熱狂的なファンをもつ人」を意味する英語に由来し、文化に応じて様々に定義される語である。 -Wikipedia-

 

サックス奏者であるボブ・レイノルズ(ex. スナーキー・パピー)が公開したVLOG(ビデオブログ)の最新話にて、クリス・ポッター(!)がボブの自宅で楽器を演奏、インタビューを受けている映像が確認できます。

 プレイヤー、プロミュージシャンとしてキャリアを積む上で影響を受けた奏者は2人いる。クリス・ポッターとジョシュア・レッドマンだ。

今回のVLOGでもそう語ったボブですが、2人からの影響はこれまでにも繰り返し述べられています。

ジョシュア・レッドマンに関しては以前から親交があるようです。過去には、ライブ直前に楽器が壊れてしまったジョシュアのために、急遽駆けつけたボブが楽器を貸した、という深イイ(?)エピソードがあります。f:id:squaredjackets:20170607105917j:plainまた、ボブが初のリーダー作であるCan't Wait For Perfectをリリースした際にも、ジョシュアがコメントを寄せています。
(余談ですが、本作はあのマイケル・ブレッカーも絶賛しています)

ここ最近聴いた音楽の中で最も新鮮で、最も魅力的で、そして最もソウルフル。ボブ・レイノルズは非常に刺激的で独創性を持った、素晴らしいミュージシャンだ。 -ジョシュア・レッドマン-

2人は最近だと、毎夏行われているワークキャンプのホストとして、若いプレイヤーの育成に励んでいます。こういったトッププレイヤーたちのアドバイスを直々に受けられるのは羨ましいですね。

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一方、クリスに関しては、
VLOG: Chris Potter solos on “Easy To Love” - YouTube

大学時代の僕に電話したなら、留守電メッセージはコレだ。(Pureに収録されたEasy To Loveに関して)
 90年代のクリス・ポッターを見過ごさないでくれ!(中略) この時代の彼の演奏は、素晴らしい情報の宝庫なんだ。

VLOG: Paul Motian, Chris Potter, Chris Cheek - YouTube

…などなど、度々その影響が語られてきました。実際、ボブの演奏からはクリスの影響が感じられる部分も多いです。しかしながら、互いに面識はあるものの、(少なくとも僕が知る限りでは)音楽的な交流はこれまでに無かったようです。そんな中、4月にある出来事が…

なんと、イギリスで開催されたジャズフェスで、自身のグループで出演予定だったクリスが、ボブの参加するスナーキー・パピーの演奏に飛び入り!スナーキーの代表曲であるLingusのソロパートを、クリスが吹いたのです(冒頭のVLOGから聴けます)。クリスは現代ジャズの中で突出した存在でありながら、Chris Potter Undergroundという自身のグループでエレクトリックな音楽もやっていますので、フュージョンちっくなスナーキーの曲は朝飯前と言わんばかりの演奏。いやはや、それにしてもぶっ飛んでますね。両者の大ファンである僕にとって、現実かどうかが疑わしい9分間でした。

サウンドチェック時にボブがクリスに声をかけたことから、この飛び入りが実現したようです。自分のアイドルに声をかける、それだけでも嬉しいことですが、そこから共演が実現して、同じステージで目の前で演奏が聴ける…夢のような出来事ですよね。このステージの後にどのようなやり取りがあったのかは不明ですが、この共演がキッカケとなって、クリスがボブの自宅を訪ねて来たことは間違いなさそうです。

  • 何故クリスが遊びに来たのか?
  • インタビューの内容は?
  • 今後の共演予定は?

気になるこれらのことに関しては、今回のVLOGでは一切触れられていないので、続報を待つことにします。焦らさないで~。

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ちなみに、ボブのリーダーアルバムはどれも素晴らしいので、是非こちらも聴いてみてくださいね。
Can't Wait For Perfectにはアーロン・ゴールドバーグ、リューベン・ロジャーズ、エリック・ハーランド、マイク・モレノ
Somewhere in Betweenにはアーロン・パークス、ヤネク・グウィズダラ、ジョン・メイヤー
Guitar Bandにはニア・フェルダー、マーク・レッティエリ(ex. スナーキー・パピー)、ロバート・シーライト(同上)
…などなど、豪華メンバーが参加していますヨ。

 

2017/6/20 追記:続編が公開されました。ボブのマーク6およびスーパー・バランスド・アクションをクリスが吹いています。2人ともいい音ですね。


Guitar Band

Guitar Band

 
Somewhere in Between

Somewhere in Between

 
Can't Wait for Perfect

Can't Wait for Perfect

 

Dig It! / Red Garland Quintet with John Coltrane (1962)

Dig It! / Red Garland Quintet with John Coltrane

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1. Billie's Bounce
2. Crazy Rhythm
3. CTA
4. Lazy Mae

Red Garland (pf)
John Coltrane (Ts on 1, 3, 4)
Donald Byrd (Tp on 1, 4)
George Joyner (B on 1, 3, 4)
Paul Chambers (B on 2)
Art Taylor (Dr)

最近、Spotifyを始めました。
無料版なので制約は付いていますが、ストリーミングで色んな音楽が聴き放題なのは嬉しいですね。もしかしたら、名盤との偶然の出会いがあるかもしれない。ということで、ジャケ買いならぬ、ジャケストリーミングを始めてみることにしました。いい音楽は積極的にDig It!な感じで…(うまい!)(これが言いたかっただけ)

レッド・ガーランドについて特段明るいわけではないのですが、ジャズ入門盤としても頻繁に挙げられるGroovyは持っています。ジャズ研では入門曲的な扱いをされるC Jam Bluesも、上手い人が演奏するとテーマだけで既に一味違う。そのGroovyのトリオに、ジョン・コルトレーンドナルド・バードの2管を加えた、王道のクインテット編成。と見せかけて、実はクインテットらしい雰囲気なのは1曲目のみで、他はピアノトリオだったり、カルテットだったり。チョット肩透かしを食らいましたが、別に気にするようなことでもありません。

ベースのジョージ・ジョイナーは聞いたことない名前だなあ、と思っていたら後年にジャミール・ナッサーという名前に改名しているようでした。ジョージ・コールマン(Sax)やアーマッド・ジャマル(pf)とも共演している、名ベーシスト。所持しているThe Awakening / Ahmad Jamalでも演奏しているようですね、こりゃ失礼。

やっぱり、クインテットで演っている1曲目のBillie's Bounceが良いですね。Blue Trainと同時期、シーツ・オブ・サウンドを開拓しているコルトレーンは脂が乗っていますし、続くバードも音色が良いので、何を吹いても上手い。ガーランドもソロとバッキング共に過不足のない、ちょうどよい音数でスウィングさせまくり。ピアニストのアルバムだからか、ガーランドが上手いからか、自然とピアノに耳が行きます。

33分というちょっと短めな1枚なので、気軽にハードバップが聴きたいときには重宝しそう。オールドなジャズに手を出し始めた人にオススメする1枚として、脳内リストに入れておきマス。

open.spotify.com

Dig It

Dig It

 
Groovy

Groovy

 

 

Voyager / Moonchild

6ヶ月もブログを更新していなかった。やってしまった。
忙しい、という訳でもなかったのですが、三日坊主のスキルはSランクを獲得しました。
いつの間にか大学を卒業し、今は大学院生です。この大学には、もう2年お世話になるわけですね。

最近では、関西発のジャズ情報誌『Way Out West』にて、新譜をレビューするコーナーにちょくちょく寄稿させていただいております。フリーペーパーですので、見かけた際には是非手にとって見てください。タワーレコードや各レコード店、ジャズ喫茶等で手に入ります。

jazgra.com

というわけで、しばらくサボっていたブログも再開したいと思い始め、溜まりに溜まっている新譜&コンサートのレビューをまたチビチビと書いていくことにしました。今年は、といってももう上半期は終わってしまいましたが、がんばるぞ。

さて、今回取り上げるのは…

Voyager / Moonchild

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Amber Navran (Vo, Key, T.Sax, Flute, Clarinet)
Andris Mattson (Key, Tp, Flh, Programming)
Max Bryx (Key, A.Sax, Flute, Clarinet, Programming)

Tru Thoughts Records (2017)
https://thisismoonchild.bandcamp.com/album/voyager

4月某日、サンダーキャットの大阪公演。
開場と同時に入場し、前から2列目のド真ん中という最高の場所を確保するも、開演まで1時間、同伴者なし、地下のためスマホは圏外、スタンディングで飲み物片手、トイレも近い。
そんな地獄の状態で開演を待っていたのですが、開場内で流れているBGMがどうも気になる。優しい女性ボーカル、メロウ、オシャレ、ビートが黒い、今っぽい。良いじゃん。サンダーキャットのライブは言うまでもなく最高だったのですが、開演前に流れていたあの女性ボーカルも忘れられない…

で、気になるその正体が、LA発の3人組、Moonchild。先日、3rdアルバム''Voyager''がリリースされました

既にYouTubeの公式チャンネルにアルバムがフルでアップされているので、とりあえず聴いていただくのが早いと思います。以上。バイバイ。

Voyager / Moonchild

エレピ、フェンダーローズ、シンセベース等の電子楽器によるエレクトリックなサウンドが空間を支配している中で、アンバー・ナヴランの甘く優しい歌声が響く…2000年前後のBaduizm / Erykah BaduWho Is Jill Scott? / Jill Scottはもちろん、昨年リリースされたThe Heart Speaks In Wispers / Corinne Bailey Raeの雰囲気も。(余談ですが、ジル・スコットは本作について''Love''と、たった一言で絶賛しています。自身が作り上げた21世紀のソウルが、2017年の現在にもキチンと受け継がれていることが嬉しくてたまらないのかな~)

しかしながら、アルバム全編を通して「よりオーガニックに」というのが、ムーンチャイルド側にとってのキーワードであるように思います。エレクトリックな要素を強くすると生楽器は「あくまでも飾り」として埋もれてしまうし、生楽器に寄せすぎるとイージーリスニングっぽくなり、R&B的なタイトさに欠ける…本作は、この辺のバランスが本当に絶妙。バンドメンバー全員が管楽器(サックス、クラリネット、フルート、トランペット)を演奏していることもあり、飛び道具としてではなく、ごく自然に生楽器のサウンドを取り入れています。もともと音大のジャズ科で結成されたグループなだけあって、楽器の腕前もバッチリ。
また、いくつかの曲でストリングスが起用されていますが、「ハイ、今ストリングス使ってますよ~!今っぽいでしょ~!聴いて~!」というヤラシさは一切無く、非常に好感触。薄味ながらも、本作におけるオーガニックさを引き立てています。

そして、ソウルクエリアンズ(つまりJ・ディラ)からの影響を公言しているように、ビートは1つ1つがずっしり重め。CureやEvery Part (For Linda)のようにストレートにノレる曲もあれば、Hideawayのようにドラムが後ろに引きずるビートもあったり、6amやLet You Goのようにボーカルやシンセがレイドバックする曲もある。先人たちを研究し尽くし、取り込んだ様々なビートが、このアルバム1枚で楽しめます。Spotifyで公開されている、Voyagerを完成させる上でインスパイアされた曲を纏めたプレイリストからもそのルーツが垣間見えます。こういうのは黒人アーティスト(とピノ・パラディーノ(笑))の専売特許だと思い込んでいたので、ちょっとビックリ。バンドの見た目的にも、やらなさそうだし…

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男2人を従えるエロティックな女性…某ゾン某えみ?

ところで、ムーンチャイルドのサウンドを初めて聴いたときに、昨年リリースされ、グラミー賞の新人賞およびアーバン・コンテンポラリー・アルバム賞にもノミネートされた、We Are King / Kingを真っ先に思い出しました。

The Greatest / King: 昨年亡くなったボクサー、モハメド・アリを讃えた1曲。粒揃いのWe Are Kingの中でも、キラーチューン的な立ち位置。日本のゲームに着想を得たというレトロなPVも人気。

スムーズでドリーミーなサウンド、というトコロに共通点はあると思いますが、キングは分厚く重ねたシンセを基軸に、曲は川の流れのようにスルスルと前進していく印象。総指揮を務めるパリス・ストローザーが弾き倒すシンセの上で、アンバー・ストローザーとアニータ・バイアスが優しく歌う…2人の歌には黒人女性的なセクシーさと同時に、シッカリした芯の強さがあります。体躯の良い笑顔の3人組は、キュートで親しみやすさもありますね。

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こうやって比較してみると、共通点が多く似ているようで、実は真逆の性質を持つ2グループでした。どちらが良い、ではなくて、どちらも良い。こうしたが付くほどメロウでナウいアルバムが2年連続で出ることがとても喜ばしいのデス。。。

そんな話題沸騰中のムーンチャイルドですが、ブルーノート・ジャズフェスティバル2017への出演が決まっている他、丸の内コットンクラブでの単独公演も予定されています。生演奏だとどのように印象が変わるのか、この目で見て、この耳で聴きたいなあ。

Voyager [帯解説・歌詞対訳 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC549)

Voyager [帯解説・歌詞対訳 / ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC549)